2016/03/15 更新

詩「便所掃除」

仕事や活動で疲れた時、

家で夕食をとりながら、

「男はつらいよ」を観るようになって

30年近くになるだろうか。

 

昨夜は、1980年12月公開の「男はつらいよ 寅次郎かもめ歌」を観た。

マドンナは伊藤蘭さん。

その中に、元おいちゃん役の松村達雄演じる定時制高校の教師が

“便所掃除”という詩を教材に使って授業するシーンがある。

「働く」ことの意味を真から感じさせてくれる詩です。

 

元の詩は、間にもう少し言葉があるようですが、

ここでは、「男はつらいよ」の中で松村達雄が朗読したそのままに紹介します。

 

国鉄労働者 濱口國雄さんの詩「便所掃除」

 

戸を開けます。

頭の芯まで臭くなります。

まともに見ることはできません。

澄んだ夜明けの空気も臭くします。

掃除がいっぺんに嫌になります。

むかつくような“ババグソ”がかけてあります。

どうして落ち着いてしてくれないのでしょう。

ケツの穴でもまがっているのでしょうか。

それともよほど慌てたのでしょうか。

唇をかみしめ戸のさんに足をかけます。

静かに水を流します。

“ババグソ”に恐る恐るほうきをあてます。

ボトンボトン便つぼに落ちます。

乾いたクソはなかなかとれません。

たわしに砂をつけます。

手を突きいれて磨きます。

汚水が顔にかかります。

唇にも付きます。

そんなことにかまっていられません。

ゴシゴシ美しくするのが目的です。

朝風がつぼから顔をなでます。

心もクソに慣れていきます。

水を流します。

雑巾で拭きます。

金隠しの裏まで丁寧に拭きます。

もう一度水をかけます。

クレゾール液を撒きます。

白い乳液から新鮮な一瞬が流れます。

便所を美しくする娘は美しい子どもを産むと言っていた母を思い出します。

僕は男です。

美しい妻に逢えるかもしれません。

 

(県政の会事務局T)